歯周病は「お口だけの病気」ではありません
歯周病は、歯ぐきや歯を支える骨に炎症が起こる病気です。原因は歯垢(プラーク)に含まれる細菌。
この細菌や炎症を引き起こす物質は、歯ぐきの血管から全身の血液に入り込み、さまざまな臓器や組織に悪影響を与えることがあります。
【目次】
・歯周病と関係があるとされる病気
・〈特に注意が必要な方〉
・1.歯周病と認知症の関係
・歯周病菌が脳に影響を与える?
・噛むことの大切さ
・予防と早めの治療がカギ
・2.歯周病と糖尿病の深い関係
・糖尿病があると歯周病になりやすい理由
・歯周病が糖尿病を悪化させる理由
・歯周病治療の効果
歯周病と関係があるとされる病気
近年の研究では、歯周病が次のような全身の病気と関係している可能性が報告されています。
- 心臓病(狭心症・心筋梗塞)
- 脳の病気(脳梗塞)
- 糖尿病
- 認知症
- 誤嚥性肺炎
- 慢性腎臓病
- 関節リウマチ
- 妊娠中の早産や低体重児出産
これらはいずれも炎症や免疫力の低下と関係があり、歯周病がその一因になると考えられています。
〈特に注意が必要な方〉
- 高齢の方
- 糖尿病や心臓病などの持病がある方
これらの方は歯周病の影響を受けやすく、反対に全身の病気が歯周病を悪化させることもあります。
- 定期的な歯科健診
- プロによる歯のクリーニング
- 毎日の丁寧な歯みがきとセルフケア

これらを続けることで、お口だけでなく全身の健康を守ることができます。
1.歯周病と認知症の関係
最近の研究で、歯周病と認知症には深い関わりがあることがわかってきました。
特にアルツハイマー型認知症という病気は、脳に「たんぱく質のかたまり」がたまり、神経細胞が壊れてしまうことで起こると考えられています。
歯周病菌が脳に影響を与える?
歯周病の原因菌の中に「P.g.菌」という種類があります。この菌は、歯ぐきから血液に入り、脳まで届くことがあります。
脳に入り込むと炎症を起こし、たんぱく質のかたまりができやすくなるといわれています。また、この菌が作る物質が脳の神経を直接傷つける可能性もあります
噛むことの大切さ
歯を失うと、食べ物をしっかり噛むことができなくなります。噛む刺激が減ると、脳の血流や働きも低下しやすくなり、認知症のリスクが高まると考えられています。
奥歯までしっかり使って噛めることは、脳の活性化につながります。
予防と早めの治療がカギ
2025年の研究では、歯周病の治療や入れ歯の調整をして噛む力を取り戻した高齢者は、認知機能の低下がゆるやかになる傾向が見られました。
歯周病予防や早期の治療は、歯を守るだけでなく、脳の健康を守ることにもつながります。

「国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター」ホームページより
2.歯周病と糖尿病の深い関係
歯周病と糖尿病は、お互いに悪い影響を与え合うことが分かっています。
これは「双方向の関係」と呼ばれ、片方が悪くなるともう片方も悪くなるという特徴があります。
糖尿病があると歯周病になりやすい理由
糖尿病では血糖値が高い状態が続きます。すると血管や免疫の働きが弱まり、細菌に対する抵抗力も下がってしまいます。
そのため、歯ぐきに細菌が入り込みやすくなり、歯周病が進みやすくなります。
歯周病が糖尿病を悪化させる理由
歯周病があると、歯ぐきで炎症が長く続きます。
この炎症によって体の中に「炎症物質」が増え、血糖値を下げるインスリンの働きをじゃまします。その結果、血糖コントロールが難しくなり、糖尿病が悪化することがあります。
歯周病治療の効果
最近の研究では、歯周病の治療をすると血糖値(HbA1c)が平均0.4〜0.6%改善することが分かりました。
これは薬の治療だけでは得られない効果で、糖尿病管理における歯科治療の重要性を示しています。
「SUNSTAR」ホームページより
- 総合的な口のケアが大切
糖尿病の方は、口の中が乾きやすくなったり、口内炎やカビ(カンジダ症)ができやすくなります。
そのため、歯周病予防だけでなく、総合的な口のケアが欠かせません。
歯科と内科が連携して診療することが、全身の健康を守るカギになります。
歯周病治療に関してはスタッフにお気軽にご相談ください。
