根面う蝕 歯の根元にできる虫歯

根面う蝕とは、歯周病などにより歯肉(歯ぐき)が下がることにより、歯の根の部分が露出し、その部分が虫歯になることです。

特に高齢者に多くみられ、最近は高齢者の歯の残存数が増加しているため、多くの方が根面う蝕の問題を抱えています。

【根面う蝕の原因】

①歯周病による歯肉の退縮:歯周病になると歯を支える骨がやせ、下がっていくとともに、それを覆う歯肉も下がっていきます。このことにより、本来、歯肉で覆われていた歯の根の部分が口の中に露出します。歯の根の部分は歯の頭の部分と違い、エナメル質に覆われておらず、象牙質が露出しています。象牙質はエナメル質より酸に溶けやすく、有機質も多く含むことから、虫歯の進行が速いのです。

②唾液の減少、口腔内乾燥症:唾液には、口腔内の酸を中和したり、表層脱灰して溶けた歯の表面を再石灰化してもとに戻す作用があります。高齢になると唾液の分泌量が減少することに加え、多くの薬の服用からくる副作用でも唾液が出なくなることがあります。糖尿病やシェーグレン症候群、がん治療のための高線量の放射線治療でも唾液が減少します。また、口の周りの筋力が低下することで、唇を閉じにくくなり口の中の水分が蒸発しやすくなったり、奥の中全体に唾液がいきわたりにくくなります。

【根面う蝕の予防と対応】

①歯肉を下げないこと:歯科医院での定期的なメインテナンスを受けることで、歯周病の予防・治療をしましょう。また、毎日の歯ブラシで過度な力を歯肉にかけないことも大切です。

②フッ素入りの歯磨剤・洗口液の使用:高濃度(1450ppm)のフッ素が配合された歯磨剤やフッ素入りの洗口液を利用して、露出した歯の根の部分の表層を強化しましょう。また、歯ブラシ後の洗口を少なくすることで口腔内にとどまるフッ素量を多くする工夫も大切です。

③補助器具の使用:歯ぐきが下がった状態で歯の根の部分を清掃するには、歯ブラシだけでは不十分です。すき間の大きさにあった歯間ブラシを歯科医院で選んでもらうといいです。

高齢化社会と共に残存歯数の増加から、今後、根面う蝕は力を入れて予防していく必要がありそうです。

参考資料 日歯8020テレビ 「放っておくとたいへん!歯の根むし歯」

国立社会保障・人口問題研究所資料より