光機能化 発想の原点(2) チタンの経時的劣化

チタンは金属として高い生体安全性とともに安定した化合物として考えられてきました。
ところが、UCLAの小川隆広教授は、ここに疑問を持ったのです。
加工直後のチタンと加工後4週間経過した古いチタンとを、
動物の骨組織に埋入した場合、古いインプラントの骨接触率は、
50%程度の骨接触率を示したのに対し、加工直後の新鮮面では約90%に達したのです。
つまり、チタン表面は、加工してからすぐ(新鮮)の状態では非常に高い骨結合能を有しているにもかかわらず、
使用せず保管した場合は、その骨結合能は時間経過に伴って減少することを発見したのです。
この結果から、チタン表面は加工作製してからの時間経過により表面が持っている
骨結合能力が低下していくことが実証され、この現象は、バイオロジカルエイジングと定義されました。
この論文が上奏された時、これまで業者から提供されるインプラント体を
何も考えずに使用していた臨床家には大きな驚きとなりました。
インプラント体の商品パッケージには、滅菌の有効期限のみが記載されており、
そのインプラント体がいつ加工製造されたかは一切記載されていません。
つまり、どの程度劣化したチタン表面になっているか不明のまま
患者さんの体内に植え込むことを続けていたのです。
日本の厚生労働省も従来の規定を変更することなく現在に至っております。
海外の製品であれば製造から1年近く経過したものは、普通に臨床で扱われているのですから、
もし、製造年月日を記載したならば、業者への返品が大量発生することでしょう。
このチタンの経時的劣化・バイオロジカルエイジングを解消する新発見が光機能化なのです。