新型コロナ感染の初期症状に味覚異常が重要視されています。

海外においても30〜70%ぐらいの人が初期に味覚異常を自覚症状として訴えると報告されています。

【味覚障害の患者さんが歯科医院を受診したとき】

①歯科で味覚異常を訴える患者さんを診察する際に、まず神経系の障害を考えます。抜歯などによる損傷、外傷による損傷、ヘルペスウイルスによる障害、中耳炎などで起こります。この場合、神経経路の障害ですからほとんどが片側です。その場所に痛みやしびれ、表情筋の麻痺などの症状が必ず伴います。

味覚異常は、感冒、花粉症、アレルギー性鼻炎などでも発現しますが、これらは鼻水や鼻づまりなどの鼻の症状を伴います。

②痛みやしびれ、表情筋の麻痺などの症状がなく、味覚異常のみを訴える場合、考えられるのは亜鉛欠乏です。亜鉛は、細胞分裂に関わる多数の酵素活性に関与しているため、血液中の亜鉛不足が味の受容器である味蕾細胞の細胞分裂を低下させます。血液中の亜鉛不足の原因として、栄養のバランス異常のほか、抗がん剤、抗パーキンソン薬、抗アレルギー薬など多種多様の常用薬があります。

③糖尿病・腎不全の影響、放射線治療後、うつなどの精神心理学的影響などによる味覚への影響もあります。これらの症状はじわじわと出現します。つまり、口腔に原因があるわけではなく全身の一症状が口腔に出ているのです。

④突然、他に考えられることがなくて著しい味覚障害が出現した場合、特発性疾患として扱われます。この時期ですので、新型コロナウイルス感染症も疑われます。

【新型コロナウイルス感染で味覚異常という初期症状はどうして起こるのか?】

新型コロナウイルスの場合、ACE2受容体を持つ細胞に感染することが報告されています。新型コロナウイルスが、II型肺胞上皮に存在するACE2受容体に結合し、感染、増殖することで生命をも脅かすウイルス性肺炎を発症すると推測されています。

そのACE2受容体は、体内のあらゆる箇所に存在しますが、口腔内粘膜にも多く存在すると報告されています。味覚障害は、舌の上に多く分布する味蕾細胞が新型コロナウイルスの感染によって破壊されて起こるものと思われます。

体内への入り口である口腔は、気道より先んじて感染するのだと推測されます。極めて初期の場合、鼻腔や口腔だけが感染している可能性も考えられます。

すなわち、発熱や咳や呼吸困難がなく、味覚障害だけが出現しているのは、鼻腔や口腔だけが感染している症例と推察されます。この段階でも他人に感染させる可能性があることが危険になります。感染が時間とともに咽頭・喉頭そして肺に広がる可能性が当然ありえます。味覚障害は新型コロナウイルス感染の自覚症状の重要なひとつのシグナルだと認識すべきと考えられます。

投稿日:2020年6月2日|カテゴリ:院長ブログ